Fuluka’s blog

音楽、映画、料理、旅について書いています。みんな読んでみてね。

パチパチドラマ「無脳シリーズ」第6話〜DAY DREAM〜

3秒で書いて3秒で読めると話題の無脳シリーズ。6話目はバンドマンの彼女と彼氏のお話です。


「今日もみんな来てくれてありがとう……!!このままわたしたちと一緒に!!武道館まで来てくれるかあああああ!!!」
  マチの声は、俺の心臓まで轟き、そして、握りつぶした。
  観客たちは皆、涙しながら、一斉に声を上げ、手を高く突き出す。
  俺は……。
「次が最後の曲!」
  じゃあ、俺は……。
「DAY DREAM!!」


  アラームが鳴った。いつもの、サウシードッグの真昼の月だ。
「ん、ん〜、おはよう……。」
  マチが起きた。
「おはよう、マチ、バイトは?」
「ん〜……今日は休む。」
「あ、そう。でも来月、大阪のハコだろ?」
「まあ、どうにかなるっぺさ……。わたし売れてるし。」
   最近、マチから「売れている」という言葉を聞くたびに、心が、ぐにゃりと曲がるような気がする。
  たしかに、マチのバンドは、あるレーベルの社長に目をつけられてから、一気に伸びた。普通のバンドじゃ、いけないようなところまで。
  でも、それから俺は、何かとても重要で大切な、心の部品が外れたみたいに、何もかもうまくいかなくなった。……気がする。
「わたし今日バイト休むからさ、昼ごはん食べに行こう?」
「俺金ねえからいいわ。」
「なんで?昨日給料日だったじゃん?」
「いや、マジ無駄遣いしたくないからさ。」
「また何か拗ねてんの?」
  胸がギュッとなった。今すぐ叫び出したかった。ああ、もう、なんで俺は、クソ。
「は?拗ねてねえよ。ただ、普通に、真面目に考えると、あんまり金使いたくねえなって。」
「最近たっちゃん、機嫌悪いから。」
「そんなことねえよ。」

  朝から最低の気分に反比例して、外は快晴だった。でも、今日は外に出たくない。この空を、今にもドス黒く、ぐちゃぐちゃにしたい。そんな気分だった。